IFRSのポイント

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第10回:資産の減損

日本基準とIFRSで減損会計に係る会計基準の違いは少なからずありますが、ざっくり言ってしまえば、減損の兆候を識別し、必要に応じて減損金額を算定するという大まかな流れは変わりありません。

 

但し、のれんについては留意が必要です。2章でご説明した通り、日本基準では一定期間で規則償却が前提としてありますが、IFRSではのれんは償却しません。

 

その結果、IFRSの方が減損テストの重要性が高まっていると言う事が出来ます。その上、IFRSにおいては減損金額が一度に計上される事になるので、金額的なインパクトも非常に大きいです。

 

実際に、過去にIFRSを任意適用した日本企業の日本基準とIFRSの差異調整表をみても、のれんの償却金額がそのほとんどを占めていると言って良いでしょう。

 

また、減損の戻入れについても留意が必要です。
日本基準では減損の戻入れは認められませんが、IFRSでは減損の戻入れが出来ます(但し、のれんについては、IFRSでも減損の戻入れは認められません)。

 

従って、将来計画の精度や見直しの頻度については、しっかり整理しておくことが重要です。
つまり、減損を実施した特定事業があった場合、当該事業の状況が回復した場合には、将来計画の金額に基づいて戻入益の金額が計上されることになるため、その実現可能性が非常に重要な論点となることになります。

 

特に、既存事業の取得や、一定期間のある程度の実績がある場合は、その実績をベースに説得力のある将来計画を策定し、その実現可能性を示す必要があります。

 

このようなケースでは、会計処理の論点に係るものとして、将来事業計画といえども、経理部門のみで帰着してしまうケースが多いのですが、事業部門等から有効な定量・定性情報を入手していくことが重要となってきます。

 

但し、導入事例をみると、戻入れについて毎期検討するのではなく、その兆候を識別した後に、状況に応じて測定するケースが多いようです。

 

具体的には、以下の2つが代表的な減損の戻入れの兆候といえるでしょう。
(1)減損対象となった事業が、その後において数期間にわたり営業利益を計上した場合
(2)減損後において市況や経済環境が変化し、土地等の売却可能価額が大幅に上昇した場合