IFRSのポイント

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第11回:有給休暇引当金

日本基準に慣れ親しんだ方々には馴染みのない勘定科目ですが、IFRSのみならずUSGAAPでも計上されている勘定科目なので、世界的には一般的な勘定科目です。

 

日本基準では、有給休暇に関しては特に会計上は考慮することなく、給料の締め日において発生した月給を当該月の発生費用として認識しています。有給休暇の発生については、会計事象として捉えていません。

 

これに対して、IFRSでは、有給休暇の発生については、会計事象と捉え費用認識することになります。つまり、将来における従業員の有給休暇の消化は、企業にとっては費用であり、その将来の費用が当期以前に起因するものであれば、当期末において引当計上するという考え方です。

 

この場合の引当金額は、決算日現在で累積した未消化の取得分のうち、将来に消化される予想日数に係る企業負担額を算定することになります。

 

当該勘定科目については、粛々と算定をしていくしかありません。

 

ポイントは、効率的な算定プロセスの構築にあると思われます。
算定に必要なデータを効率的に収集し、一気に計上金額を導き出せるような算定手法を構築することがポイントになるかと思います。

 

この場合には、繰り越された有給休暇の使用実績をどう捉えるかが、引当金算定の際の論点となります。

 

日本経済団体連合会が公表している「IFRS任意適用に関する実務対応事例」(2014年1月15日版)をみると、有休消化については
・先入先出法
・後入先出法
・翌期首付与分も含める方法
の3パターンで算定の取扱いが異なってくるようです。

 

(1)先入先出法
当期末未消化で繰り越された有給休暇日数のうち、翌期に消化が見込まれる日数分の債務について計上する。

 

(2)後入先出法
当期付与分の有給休暇については、当期の労務費に織り込まれているため引当金計上はしない。
当期付与分を超えて消化されると見込まれる場合のみ、追加金額として計上する。

 

(3)翌期首付与分も含める方法
有給休暇繰越分のうち翌期消化見込み分に加え、翌期首付与分の有給休暇のうち消化が見込まれる分についても、当期の勤務に伴って発生したものと捉えて、引当金計上する方法

 

また、子会社(特に海外子会社)についても、有給休暇制度があれば、同様に引当金計上する必要があるので、ご留意下さい。
但し、導入事例では、子会社における引当金の金額的重要性が乏しいため、引当計上を省略するケースも見られます。

 

いずれにしても、有休制度の内容について再確認し、実態に即した会計処理を行なうことが肝要です。