IFRSのポイント

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第12回:IFRSの準備期間

いきなり明日から会計基準を日本基準からIFRSに変更して、IFRSの開示をしようと思っても当然のように無理があります。

 

そもそも、IFRSの開示を行なう際には、当期の財務諸表だけではなく、その比較情報となる前期の財務諸表を作成しなければなりません。
また、前期の財務諸表を作成するためには、その期首の残高についてもIFRSを適用したものを準備しておく必要があります。

 

つまり、
PL:2期分
BS:3期分
を遡って作成する必要があります。

 

通常の日本基準の決算もそうですが、遡って決算作業を行なうことは非常に困難なケースが多いです。
そのため、開示を正式に行なう期の前期首からIFRSによる決算の数値は根拠資料等とともにある程度押さえておく必要があります。

 

従って、前期首にはある程度の(又は全ての)IFRS対応の準備を終えておく必要があります。
特に重要なのは、売上計上に関する事項です。

 

表現は悪いですが、決算時にのみ生じる決算仕訳のような内容のものは、ある程度遡って対応することは可能かも知れません。

 

その一方で、日々の記帳の積み上げが財務諸表に反映されるものに関しては、その都度対応しておかないと取り返しのつかないことになる可能性があります。

 

例えば、売上計上基準を出荷基準から検収基準に変更する場合は、事後的に売上計上金額を組み替えることは、作業自体は煩雑かも知れませんが、データさえ揃っていれば不可能ではないかも知れません。

 

但し、内部統制の観点から言えば、検収基準のエビデンスとなる証憑関連も漏れなく揃えておくことは、遡って対応することはほぼ不可能であると思われます。

 

また、IFRSを導入する場合には、親会社決算対応にばかり目が向きがちですが、子会社対応にも目を向けなければなりません。

 

基本的には、子会社よりも親会社の方が検討すべき論点は多く、その重要性も高いです。また、実質的には親会社が主導となって、連結ベースの観点でIFRSの導入を行なっていくものと思われます。

 

但し、子会社でもIFRSへの組替を行なうべき事項はゼロではありません。一般的には、子会社の経理部門等は人数や体制がコンパクトで、言いかえればIFRS対応を行なう人材や時間が非常に限定的なケースが多いと思います。

 

したがって、親会社でフォローや対応を行なうべき項目の検討も含めて、親会社と同様に余裕をもった準備期間の設定が望まれます。