IFRSのポイント

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第6回:有形固定資産の減価償却方法と償却年数

①償却年数

 

≪会計上の論点≫
IFRS:資産が企業によって利用可能であると
予想される期間
日本:法人税法上の耐用年数

 

IFRSを適用する場合、厳密に言えば、全ての有形固定資産について、資産が企業によって利用可能であると予想される期間を見積もる必要があります。
しかし、実際に実施しようとすると、非常に煩雑な作業が伴うことになります。

 

その場合に、日本における法人税法上の耐用年数それ自体が全く実態から乖離しているとは考えづらく、引き続き当該年数をIFRSにおいても使用していくことは十分に考えられます。

 

つまり、法人税法上の耐用年数がIFRSにおける償却年数と近似しているという事を、ある程度説明がつけられれば良いのです。

 

なお、現行の日本基準においても償却年数は資産の経済的使用可能予測期間とした上で、不合理と認められる事情のない限り、法人税法上の耐用年数を妥当なものとして取り扱うことができるという建付けになっています。

 

以上を勘案すると、例えば、
重要な資産:過去実績の使用年数
それ以外:法人税法上の耐用年数
という方法が、実務的な対応の1案として挙げられます。

 

とは言え、何の検討もなしに、無条件に法人税法上の耐用年数をIFRSで適用することは認められません。

 

導入事例をみても、少なくとも主要な有形固定資産については、過去実績の使用年数と法人税法上の耐用年数を比較検証して、大きな乖離がないことは確かめているケースが大半です。
その上で、多くの企業は、日本基準での耐用年数がIFRSにおいても妥当であると判断しています。

 

但し、過去実績の使用年数と法人税法上の耐用年数の乖離が大きい場合は、償却年数についても見直していく必要があるのでご留意ください。

 

②償却方法

 

≪会計上の論点≫
IFRS:将来の経済的便益が企業によって消費される
と予測されるパターンを反映した方法
日本:会社の任意で選択適用

 

定額法と定率法の2択の観点で単純に言えば、会社がそのどちらかを選択する際に、従来の日本基準では会社の任意で好きな方法を選択出来たところが、IFRSでは「消費パターンを反映」する方法を選択しなければならない、ということになります。

 

IFRSでは、一般的には「定額法」が採用される傾向にあるようです。
言い換えれば、「定率法」の前提となるような逓減的な消費パターンを厳密に証明することは困難であるのが現状であるといえるでしょう(何となく、逓減している感じである感触はあったとしても)。

 

但し、ある程度の逓減する状況が説明できるのであれば、定率法を適用出来る余地は十分にあると思われます。
しかし、その説明する手間をコストと捉え、いっそのこと定率法から定額法へ変更してしまう方が実務的なのかも知れません。

 

導入事例をみると、IFRSを見据えて定率法から定額法へ変更するケースもありますが、IFRS下でも引き続き定率法のままのケースがあります。
(なお、IFRSを見据えて定額法から定率法へ変更するケースはほとんどありません。)

 

定率法を採用する場合の根拠としては、使用年数の後半において修繕作業の頻度や費用金額が増加する傾向にある実績を用いているケースが多いようです。

 

それでは、定率法を継続適用している場合の実際の導入事例をみてみましょう。
大きく3つの段階に分けて、定率法を採用する根拠の考え方を整理しています。

 

STEP1
検討対象資産の過去10年間における、減価償却費と修繕関連費用の合計金額の推移を検証した。

 

STEP2
その結果、上記金額の合計金額は概ね一定の範囲内で推移していた。つまり、減価償却費が逓減し、修繕関連費用が逓増している傾向が見受けられた。

 

STEP3
検討対象資産の経済的使用価値がほとんど変化していないことを踏まえると、減価償却方法は、これまでの定率法が資産の経済的便益の消費パターンを反映した方法であると考えることが出来る。