IFRSのポイント

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第8回:連結範囲・決算報告期間の統一

①連結範囲

 

≪会計上の論点≫
IFRS:「支配」している会社
日本基準:持ち株比率に応じた要件を満たした会社

 

親会社が支配している会社を連結対象とするという基本的な考え方は、IFRSでも日本基準でも全く同じです。

 

但し、実際に支配している会社を判定する際に、日本基準では持ち株比率(50%超、40%~50%、40%未満)に応じて具体的に規定されているのに対して、IFRSでは「支配」をしているものとみなす定性要件が列挙されているのみです。

 

とは言え、実務上の取扱いとしては、実際にIFRSにおいて支配の有無を検討する際にも持分比率は重要なファクターとなるので、日本基準と同様の考え方を踏襲して連結範囲を定めることで差し支えないものと考えられます。

 

また、全ての子会社を連結するか否かの観点で、重要性の低い子会社についても、日本基準と同様に考えて差し支えないものと考えられます。

 

実際の導入事例を見ても、
・重要性の低い会社も連結するケース
(但し、連結作業自体は工夫して簡略化)
・日本基準と同様とするケース
で分かれています。

 

また、実務上の一番の相違はSPEかも知れません。

 

導入事例をみても、日本基準では連結範囲に含めていなかったSPEを、IFRSにおいては連結範囲に含めるケースが散見されます。

 

少なくとも、SPEを持つ会社は、最終的に連結範囲に含めるか含めないかに関わらず、IFRS導入時に際しては、相応の検討をする必要はあると思われます。
逆に言えば、SPEを持たない会社は、影響は限定的であると思われます。

 

いずれにしても、IFRSを適用して連結範囲が少なくなる事は無さそうです。

 

②海外子会社の決算期間の統一

 

≪会計上の論点≫
日本基準:3か月ズレを容認
IFRS:実行不可能な場合を除き統一

 

この論点は、実務上の影響が大きい論点のひとつであると思われます。
簡単に言えば、これまで3か月の猶予をもって決算(四半期決算)を行なっていた海外子会社については、その猶予期間が無くなることを意味するからです。

 

IFRSのもとでは、決算期は原則統一すべきですし、何らかの合理的な理由により統一が不可能な子会社がある場合でもその前月(1か月ズレ)で実施することになると思われます。

 

実務上の影響では、厳密な決算を全ての子会社に適用するのは非常に煩雑で、それに伴い連結決算スケジュールが非常にタイトになるものと予想されます。
そこで、ひとつの解決策として、決算期の統一(3か月ズレの解消)を図るとしても、海外子会社の重要性に応じて弾力的に対応する方法が考えられます。

 

例えば、
重要な子会社:ここはある程度対応する。
(決算業務の効率化、人材投入、親会社のフォロー)
それ以外:決算手続き自体の簡略化
が考えられます。

 

上記でいう簡略化では、例えば、引当金計上・税金税効果計算・経過勘定等の決算特有の算定プロセスは、合理的な見積りの範囲内の中である程度概算によって連結決算に取り込んでしまう事が考えられます。

 

但し、その際でも主要勘定(売上計上、売上原価計上)については、基本的には実際の取引に基づいて通常の会計処理を行なう必要があります。

 

決算期間の統一について導入事例をみると、以下の組み合わせで様々あります。

 

・重要性のある会社
 決算期を統一
 仮決算を実施

 

・重要性の乏しい会社
 決算期を統一
 仮決算を実施
 重要な取引や事象についてのみ調整
 仮決算を実施しない

 

その一方で、子会社管理の在り方について、これを機に一度見直してみるのも良いかも知れません。
少なくとも、海外子会社管理において、よりタイムリーな業績管理を行なう事は望ましいものと考えられます。
業績管理の手法の観点から、子会社の決算簡略化の内容を決定していくことも、マネジメントアプローチの観点からは有効かも知れません。

 

実際に導入事例を見ても、

・海外子会社が多く、業務の状況や効率性を比較検討するために、共通のモノサシで業績の測定がなされないと、公正な評価ができない

・親会社と同一時点での各子会社の決算データを、連結決算業務に取り込むことにより、事業上の課題を早期に発見し、財務情報の透明性・ガバナンスを高めることが出来る。

という具合に考えている会社は多いようです。