IFRSのポイント
column ifrs
第9回:非上場株式の公正価値評価
≪会計上の論点≫
日本基準:時価評価しない
(一株あたり純資産が著しく下落すれば減損)
IFRS:時価評価する
日本基準では、非上場株式は基本的には取得原価で計上されており、定期的に決算書を入手して一株あたり純資産が50%以上下落していないことを確かめていました。
その一方でIFRSでは、非上場株式も上場株式と同様に時価評価を行なう必要があり、IFRS13号「公正価値測定」の原則に基づき時価評価するという建付けになります。
非上場株式の時価評価については、当然の事ながら上場株式のような市場の株価がないため、一定の仮定に基づいて公正価値を算定(見積もる)必要があります。
例えば、以下のような方法があります。
・類似業種の上場会社の株価を参考に算定する方法
・企業が生み出す将来CFを見積もって算定する方法
・将来配当を見積もって算定する方法
・純資産額に基づいて算定する方法
上記の1~3つ目の方法はいずれも合理的な見積方法と言えますが、非常に煩雑な作業が伴います。より精度の高い公正価値を算定しようと思えば、より詳細な情報の入手や検討が必要となるため、尚更です。
また、算定対象となる非上場株式の数が多くなると、会社の経理体制によっては、実質的に対応困難となる場合も考えられます。
その点では、純資産額に基づいて算定する方法がもっとも効率的な方法であると言えます。
また、導入事例をみると、大半の会社が重要性の概念を適用しています。
すなわち、一定の重要性の判断基準を設け、実際に公正価値評価を行なう銘柄を選定しています。
言い換えれば、一定の重要性の判断基準を設け、取得原価をもって貸借対照表価額とする銘柄を選定しています。
また、純資産額に基づく公正価値評価も、そのタイミングとして第1四半期において行なうケースも多いです。
つまり、同じ3月決算の場合、投資会社のBSを入手するタイミングが、そのタイミングになってしまうという事です。
その一方で、外部機関に公正価値評価を依頼するケースもあります。特に、金額的重要性が高い投資については、多少のコストはかかりますが、専門の外部機関に評価を実施してもらうことも有用でしょう。
その際には、専門機関が公正価値評価を算定するプロセスも報告書等で明示しているので、当該算定方法を翌期以降は自社にて準用(算定に使用されている数値等をアップデート)して、毎期の公正価値評価に生かすことも出来ます。
特に、当初の投資時点において、既にそのような報告書等を入手している場合は、その算定プロセスを参考にすることによって、効率的に公正価値評価を行なうことが出来ると思われます。